ダメなあいうえお

ダメダメなんです

ろくでなし

私がこの辺鄙な温泉街に来たのは、もちろん死ぬためだ。 誰にも見つからず、静かに一人きりで、死にたかった。 最後くらいは、好きにしたっていいはずだ。 質素な民宿に三日間泊まり、毎日街外れにある温泉へ通って現世での疲れを癒し、ゆっくりと身支度を整…

殺された友人

これは、4年前の冬、とある温泉街で暮らしていた時の話である。 日の出前の仄暗い街を散歩するのは、僕の日課だった。 温泉街の終わりにある登山道の入り口をくぐり、小高くなって街が一望できるところまで登ると、引き返して家に戻る。 その日は散歩帰りで…

おかしな話「知らない女」

我ながらおかしな話だが、彼女が出来て5年が経つ。 そうして遂に、世間で言うところの結婚をすることになった。 こういうことにはまるで疎いから、結婚するには式を挙げねばならないものだと思い込んでいたら、「そんなことないわよ」と彼女は笑いながら、婚…